『半分の月がのぼる空』 あの月は下弦か上弦か?

 こうしてときどき映画の感想を書いていながら、あまりに素晴らしい映画のときには言葉にするのがもったいなくて感想を書けないことがある。
 しかし同時に、その映画を観たことを、つたないながらも綴りたいという強い想いが湧き上がる。

 『半分の月がのぼる空』は、そんな映画だ。


 病院という非日常の中で里香と出会う裕一。
 里香にとっては病院が日常で、病院外こそが非日常。
 退屈なはずの入院生活と、ごく普通の高校生活が、日常と非日常の逆転した2人の目を通すことで輝きだす。

 非日常の中で出会った少女は、それだけで天使である。
 だが、天使の第一声は「はあ?」(語尾を上げて)。
 この天使はわがままだ。口も悪い。
 そんな里香の表情が、映画の進行とともにみるみる変わっていくのが素晴らしい。


 この作品は、ありがちな難病モノに陥らず、日常の中のトキメキを丁寧に描き出す。
 夜中に山登りしたり、頭から布団をかぶったり、取り立てて変わったことではないはずなのに、2人にとってはどれも貴重な瞬間だ。

 それを特徴づけるのが、安田光氏の撮影だ。
 遠景を排し、手ブレを抑えずに、カメラは裕一と里香に寄り添い続ける。
 あたかも、裕一が里香を、里香が裕一を、ホームビデオに収めているように。
 そして映画を観終えたとき、その全編が、裕一と里香の思い出を詰めた記録に変貌する。


 本好きの里香がしばしば口にするのが、『銀河鉄道の夜』の一節である。
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「ぼくはおっかさんが、ほんとうに幸《さいわい》になるなら、どんなことでもする。けれども、いったいどんなことが、おっかさんのいちばんの幸なんだろう。」カムパネルラは、なんだか、泣きだしたいのを、一生けん命こらえているようでした。
「きみのおっかさんは、なんにもひどいことないじゃないの。」ジョバンニはびっくりして叫びました。
「ぼくわからない。けれども、誰だって、ほんとうにいいことをしたら、いちばん幸なんだねえ。だから、おっかさんは、ぼくをゆるして下さると思う。」カムパネルラは、なにかほんとうに決心しているように見えました。
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 いったいどんなことが、1番の幸いなんだろう。
 私たちは、本当に決心しているだろうか?


半分の月がのぼる空 [Blu-ray]半分の月がのぼる空』  [は行]
監督/深川栄洋  脚本/西田征史  原作/橋本紡  撮影/安田光
出演/池松壮亮(いけまつ そうすけ) 忽那汐里(くつな しおり) 大泉洋(おおいずみ よう) 濱田マリ
日本公開/2010年4月3日
ジャンル/[ロマンス]
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【theme : 心に残る映画
【genre : 映画

tag : 深川栄洋 池松壮亮 忽那汐里 大泉洋

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