『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』対談 第二章までを巡って

 『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の劇場公開がはじまった。
 2017年2月に『第一章 嚆矢篇』と銘打って第1話~第2話が、同年6月には『第二章 発進篇』として第3話~第6話の特別上映が行われた。

 当サイトにデスラー及びガミラスに関する考察を連載されているT.Nさんもまた、2202を観るために足を運ばれた一人だ。T.Nさんと当サイト管理人のナドレックは、今後の連載について相談するかたわら、2202に関して意見を交換した。
 旧作『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』と『宇宙戦艦ヤマト2』のリメイクでありながら、新作『宇宙戦艦ヤマト2199』の続編でもある『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』。旧作とは何が同じで何が違うのか、2199から何を受け継いだのか/受け継がなかったのか。

 波動砲やヤマト出撃の描き方を中心に交わしたやりとりを、ここに公開する。
 以下は、第二章公開時点でのメールの往復を対話形式に編集したものである。

宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 1 [Blu-ray]T.N:『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の第一章と第二章を観て私が強く感じたのは、「2202の製作者たちは地球と波動砲が活躍する話が描きたい」のではないかということです。というのは戦闘シーンを見る限り、波動砲が活躍できるように意図的に計算して描かれているからです。

 例えば2202第一章の艦隊戦では、艦艇がのそのそと鈍重に動く描写に変更されています。2199のガミラス艦が冥王星沖海戦やドメルのガトランティス討伐戦で高速で疾走していたのとはまったく対象的な描写です。また、ガトランティス艦隊は浮遊大陸程度の狭い範囲に密集したまま散開も機動も行わない。これなら拡散波動砲のように広域を照射できる艦首砲一発で全てを薙ぎ倒せるでしょう。

 このように2202は波動砲が非常に効果的な武器であるように描写されています。そこに私は「地球艦隊と波動砲を活躍させたい」という2202の製作者達の情念を強く感じました。


ナドレック:『宇宙戦艦ヤマト2199』のガミラス艦隊は、特に説明がなくても十字型や円筒型の陣形をとっていて、合理的にヤマトを追い込んでいました。だから手に汗握る戦闘が展開されたのですが、2202の第一章と第二章を鑑賞する限り、そういう見せ方はしていませんね。おっしゃるとおり、ガトランティス軍は拡散波動砲でなぎ払ってくれと云わんばかりの状態です。波動砲の威力を印象づけるためだとしても、せっかくの艦隊戦なのにもったいないと感じました。


宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 2 [Blu-ray]■旧作とは異なる地球の描写

T.N:また、地球人がガミラス大使にまるでガミラスと肩を並べる大国であるかのような丁々発止の会話を交わす(アンドロメダ級の進水シーンなど)描写があることからも、外敵が来るたびに全滅する情けない旧シリーズの地球と決別したいという製作者達の意気込みをも感じました。

 これらの地球と波動砲への情念が前面に押し出された結果、2202は2199で見られた戦いの合理性が影を潜めてしまったと私は考えています。


 ――第二章でマルチ隊形を敷く波動砲艦隊や建造中の波動砲艦が出てくるが、あの程度の数で星間国家との戦争に勝てると芹沢たちは本気で考えているのだろうか?ガミラスが万単位の艦艇を動員できることをヤマトから報告されているはずなのだが。
 そしてザルツ人にあれだけ横柄で傲慢な態度をとるガミラス人が地球人と簡単に仲良くできるのだろうか?ガミラス大使は地球人に「単に我々はイスカンダルの口ぞえがあったから滅ぼさずにおいただけだ」という態度をとるのではないか?

 ――現代の将校らしい分別のある2199の古代なら、波動砲を作ったところで戦争に勝てないと地球の首脳達にハッキリ指摘するのではないか。田畑と地上の工場が絶滅した地球は確実に深刻な困窮状態にあるはずで、古代は「目先の軍備を整えるのではなく、百年の大計を立てて今目の前で飢えている人々の為に波動エネルギーを使うべきだ」と主張するのではないだろうか?


 2202の描写に関して、私は上記の疑問を感じています。2202は地球のかっこいい姿を描写しようとするあまり、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』で描写されたおごり高ぶる地球の愚劣さが非常に薄められる内容になるのではないかと懸念しています。


さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち [Blu-ray]■決起する有志たち

ナドレック:『宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち』の作り手は、必ずしも地球をかっこよく描きたいと考えているわけではないと思います。
 旧作(『さらば―』『ヤマト2』)の地球は繁栄に酔い、驕っているようでしたが、2202では地球が軍備拡張路線をひた走る様子が強調されています。旧作に比べると、おごり高ぶる者の愚劣さが薄められたように感じられますが、これは古代たちヤマトクルーの描き方との対比からやむを得ないのだと思います。


 平和に溺れて惰眠をむさぼり、危機が迫っているのに取り合おうしない人々に見切りをつけ、わずかな有志が立ち上がって、強大な敵に戦いを挑む……という話は、松本零士氏の得意とするところで、『さらば―』に先行するマンガ版『宇宙海賊キャプテンハーロック』もそういう話でした(アニメ版の『宇宙海賊キャプテンハーロック』は、打倒ハーロックに全力を挙げる切田長官なるオリジナルキャラクターを登場させてしまい、ハーロックの仲間以外は全員愚劣で惰眠をむさぼっているという重要な設定を台無しにしてしまいましたが)。

宇宙海賊キャプテンハーロック 第1巻 (サンデーコミックス) 『宇宙海賊キャプテンハーロック』でこの物語が成り立ったのは、ハーロックと40人の宇宙海賊が自由人であり、何ものにも縛られず、信念のままに行動するということが、作品の核だったからです。ハーロックは誰かの命令を受けたりしませんし、誰かに意見を申し述べたりもしません。自分がやろうと思ったことをやる、やろうと思ったら誰にも邪魔させない。それだけです。その自由さが、ハーロックたち宇宙海賊の魅力であり、彼らが宇宙海賊(お尋ね者)たるゆえんなのです。

 対して、古代進をはじめとする宇宙戦艦ヤマトのクルーたちは、軍人・軍属です。軍の指揮命令系統に組み込まれており、これに反することは許されません。
 にもかかわらず、彼らはテレサのメッセージに呼応して、勝手にヤマトで出撃してしまいます。これは国家に対する反逆です。目的のいかんに関わらず、軍人がもっともやってはいけないことです。

 勝手に行動する軍人に関して、日本人は苦い記憶を持っています。
 1932年5月15日、18人の青年将校らが方々を襲撃して時の首相を殺害。結果的に政党政治を終わらせてしまいました。
 1936年2月26日には、政治の腐敗を正し、貧困に苦しむ人々を救済しようと青年将校らが決起し、総勢1,483人があちこちを占拠して多くの人を殺しました。
 中国大陸では関東軍が満州事変を引き起こし、陸軍統制派は日中戦争を拡大させ、遂には米英各国との全面戦争をもたらして、大日本帝国を滅亡へと追いやりました。

 この軍人たちは何も悪事を働こうと企んだわけではありません。腐敗し国を危うくする(と彼らには見える)政党・政治家よりも、自分たちの行動のほうが国にためになると考えたのでしょう。
 軍が勝手に行動したといっても、必ずしも軍が孤立していたわけではありません。満州事変後、勝ち戦のうちは世論は軍の味方でしたし、逆に、政争に明け暮れる政党のほうが民衆から愛想を尽かされていたといいます。

宇宙戦艦ヤマト 復活篇 [Blu-ray] 愚劣な上層部を無視して英雄的行動に突っ走る古代たちの姿は、これら戦前戦中の軍人たちに重なります。
 『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』や『宇宙戦艦ヤマト2』が世に出た当時、私はこの相似に思い至りませんでした。
 強烈だったのは、やはり『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』です。石原慎太郎氏を原案に迎えたこの映画は、ABCD包囲網に苦しむ日本の姿を投影したと云うだけあって、1930~1940年代の状況そのままです。惑星アマールは中国大陸、地球人が入植をはじめたアマールの月は満州、敵対する大ウルップ星間国家連合はABCD包囲網かつ連合国、大ウルップ星間国家連合の中でも最大の国SUSはスーパーUS(米国の拡張版)といえるでしょう。
 アマールの月への入植(満州の権益)を邪魔された古代たち(関東軍)が、地球(本国)の了解もなしに戦端を開くのは、満州事変を思わせます。大ウルップ星間国家連合の一員であるアマールが、本当はSUS率いる星間国家連合から独立したいと願っていて、星間国家連合と戦うヤマトに(自分も連合の一員でありながら)共感するという流れは、中国を含むアジア諸国に攻め込みながら、大東亜戦争はアジア解放のためだったという言説の宇宙版といえましょう。
 満州事変を起こした関東軍を肯定したかつての世論の亡霊のような面が、『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』にはありました。

 『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』ほどあからさまではないにしろ、上層部の意向を無視して戦いはじめる軍人を英雄視する傾向が、宇宙戦艦ヤマトシリーズにはしばしば見受けられます。
 そして『宇宙戦艦ヤマト 復活篇』を念頭に置いて振り返るとき、その嚆矢にして最たるものが『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』のヤマト出撃だったことに気づくのです。


宇宙戦艦ヤマト2199 Blu-ray BOX (特装限定版)■2199の取り組み

ナドレック:『宇宙戦艦ヤマト』のリメイクのみならず、シリーズ全体の再構築を目指した『宇宙戦艦ヤマト2199』は、この問題にも切り込みました。第11話から第13話にかけて、現場の軍人が勝手に判断することの是非を問うたのです。
 ただしそれは、戦おうとしない人々に見切りをつけて自分たちだけで決起する話ではなく、上層部から下された戦闘命令に応じないで、戦いを避けようとする話でした。たとえ命令に反してでも、ときには立ち上がらない勇気が必要なのではないか。そう問いかけた『宇宙戦艦ヤマト2199』は、暴走する軍部を称賛する傾向を持つ旧シリーズへの明らかな反論でした。

 しかも、地球ではもっぱらガミラス側が戦争をはじめたとされていたのに、実は先に戦端を開いたのは地球側であることを暴いたエピソードによって、開戦のきっかけには欺瞞があることも指摘しました。
 このエピソードは、満州事変のきっかけとなった柳条湖事件が、本当は関東軍によって起こされたものなのに、中国軍の犯行と発表されて日本中それを信じていたことが念頭にあったに違いありません。

 戦争の愚かさ、欺瞞をよく知る2199の作り手は、宇宙戦艦ヤマトシリーズに見え隠れする戦前の軍部を肯定する雰囲気を払拭し、後世のために新しい物語を紡ごうと、このような作り込みをしたのでしょう。


宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 1 [Blu-ray]■2202の取り組み

ナドレック:『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』及び『宇宙戦艦ヤマト2』のリメイクを作る上で、ヤマト出撃に至る経緯の描き方が難しいことは、2202の作り手も判っていたはずです。『さらば―』『ヤマト2』の序盤のかっこよさは、立ち上がろうとしない人々に見切りをつけてわずかな有志が決起する心意気にありましたから、そこから大きくは変えにくい。けれども、旧作どおりにすれば、国家に反逆して戦争に乗り出す軍人を肯定的に描くことになってしまいます。それは今の時代にあり得ないでしょう。

 この難題に取り組むため、2202の作り手は様々な工夫を凝らしています。

 まず、亡き者の幻影が現れて、ヤマトクルーの多くに「ヤマトに乗れ」と告げます。思いもかけない死者の言葉に、古代たちはひどく悩みます。
 作り手たちは、スピリチュアルな展開にした上で、死者のサンクコスト(ここでやめたら死んでいった者に顔向けできないと思ってしまう人情)を喚起する手法を使って、観客の感情を揺さぶったのです。

 また、『ヤマト2』で描かれたヤマト発進を阻止しようとする地球防衛軍との攻防戦を強化し、アクションシーンの躍動感で観客を高揚させて、観客から違法行為の是非を考える冷静さを奪います。

 とっておきの変更は、ガミラス帝国がヤマトの行動を擁護することです。旧作ではヤマトクルーの孤独な反乱でしたが、本作では外国政府がお墨付きを与えることにより、地球連邦政府が狭量なだけで宇宙全体から見ればヤマトクルーのほうが正しいと感じられるように演出しました。
 T.Nさんのおっしゃるように、2199からの流れで考えれば、他民族への蔑視がはなはだしかったガミラス人が簡単に古代たちの肩を持つのは不自然です。それでも敢えてガミラス帝国を物語に絡ませたのは、古代たちの行動に無理があるところを説明するデウス・エクス・マキナとしてガミラスを活用するためでしょう。ガミラスの駐地球大使ローレン・バレルや地球駐在武官クラウス・キーマンが物語の要所々々で古代たちの行動を正当化してくれなければ、とてもじゃないけどこの物語は成立しなかったはずです。2202は、2199が残してくれたガミラス帝国との友好関係という要素を最大限に活かしているのです。

 さらに、テレサからのメッセージの受信とガトランティスとの戦いを切り離して描くことで、ヤマト出撃は戦いのためではなく、困っている人を助けに行くためという描き方にしています(ここは『ヤマト2』よりも『さらば―』に近い)。
 本来これはおかしなことです。上官の制止命令を振り切ってまで行きたいのなら、せめて辞表を出して軍人の身分を返上し、民間船をチャーターすべきです。
 2017年8月現在、12人の日本人がスパイ容疑で中国当局に捕らわれています。けれどもその全員が本当にスパイだと思っている人はいません。権力基盤の強化と軍事力増強を進める習近平政権下の中国で、スケープゴートにされたのだと見られています。一刻も早い解放が望まれますが、だからといって、たとえば現役自衛官が無断で駆逐艦を動かして邦人救出に向かうようなことは許されません。もしもそんなことをすれば戦争になります。日本政府は全力で彼らを止めるでしょう。止めねばなりません。
 本作では、古代が長広舌をふるって、助けに行くことの尊さや意義を力説する一方、彼らが軍人であり、動かそうとしているのが軍艦であることには触れないようにしています。古代たちを邪魔立てするのは憎々しい芹沢虎鉄なので、観客はどうしたって古代たちに理を感じるようになっています。

宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 2 [Blu-ray] 工夫の極めつけが、地球の描き方です。
 旧作の地球上層部は、繁栄に酔って堕落している設定でした。しかし、愚劣なようでも彼らは平和的な存在でした。他方、軍艦を奪って決起するヤマトクルーは、上層部よりも好戦的です。これではどうあがいても、暴走する軍人を肯定する物語になってしまいます。
 この構図を反転させたいがため、2202では旧作以上に地球連邦の軍拡路線を強調したのではないでしょうか。
 上層部は再軍備に余念がない一方で、古代たちはあくまで救援に向かいたいだけであるとするならば、好戦的なのは連邦政府で、古代たちは相対的に平和な存在に見えるはずです。旧作に比べて地球の描き方が変わったのは、物語の骨格を継承しつつ、古代たちを好戦的な反逆者に見せないための処置なのだと思います。
 だから、救援に向かうべきという古代の意見がなぜ却下されたのか、劇中ではハッキリした説明がありません。旧作では、上層部に立ち上がるだけの気概がないということが明白でしたが、2202ではその理由が使えない以上、説明できるはずがないのです。


ナドレック:実は、旧作のように、立ち上がろうとしないだらしない政府と、高い志を持って立ち上がる者たちの対立の構図にしたほうが、物語としては判りやすくなります。何しろ戦前の日本人は、この構図を受け入れて関東軍にやんやの喝采を送ったのですから。

 けれども、2202の作り手は、物語を変えずに構図だけ変える苦しい舵取りを選んだようです。

 変え方はいろいろあったはずです。先に述べたように、古代たちが軍人を辞めて民間船でテレザートに向かうことも考えられます。地球連邦防衛軍の上層部が古代の進言を聞き入れて、正式にテレザート救援を命ずることもできたはずです。こうすれば、古代たちが反逆者になることは避けられます。あるいは、古代の意見を却下したのは芹沢で、藤堂長官の知るところとなって許可が出た、という展開だって考えられました。
 他の作品ならいざ知らず、ヤマトのリメイクに携わる人たちは、みずからがヤマトのファンで、オリジナルが発表されてからの40年間、ヤマトのことを考え続けてきたのでしょうから、ありとあらゆる可能性を吟味し尽しているはずです。そして、40年のあいだに培った世界観、歴史観、人生観と様々な知見のありったけを注いで導き出した妥当な解が、いま観客の前に提示されているはずです。

 ですから、その作品を納得して受け止めたいところです。
 しかし、私にはどうもしっくり来ません。ヤマトの出撃に関していえば、結局は暴走する軍人をいかにして肯定するかに腐心しているように見えてしまいます。


宇宙戦艦ヤマト2199 コスモリバースVer.■波動砲を封印する意味

ナドレック:気になるのはそれだけではありません。
 たとえば、封印を解かれてしまうヤマトの波動砲。
 芹沢が波動砲艦隊計画を推し進めるのはともかくとして、ヤマト自体の封印の解除をクルーが受け入れてしまうとはどうしたことでしょう。
 もちろん、これからの長丁場、ヤマトが波動砲を封印したままでいるとは思っていませんでしたし、作り手としては、たとえばアンドロメダの拡散波動砲では敵わない敵をヤマトの収束波動砲が粉砕する爽快感等を再現したいところかもしれません。ですから、どこかの時点で何らかの形でヤマトの封印が解かれることは覚悟してましたが、よもやこうもアッサリ済まされるとは予想だにしませんでした。

 2199で波動砲が封印されたのは、単に強大な兵器というだけではなく、宇宙を引き裂いて大きな災厄をもたらすおそれがあったからです。こういうアイデアは、SFでは珍しくありません。たとえば、エドモンド・ハミルトン著『スター・キング』の超兵器ディスラプターは、宇宙を消し去って敵味方関係なく滅ぼしてしまうため、滅多なことでは使えないように封じられていました。波動砲も、敵も味方もお構いなしに壊滅させる最終兵器だからこそ、使ってはならなかったのです。もちろんそれは、現実のICBM等の比喩でもあります。

 波動砲の封印は、おそらくその復権のためでもあったのだろうと思います。はじめて作品に登場したとき、あまりの威力に誰もが恐怖した波動砲も、やれ拡散波動砲だ新波動砲だ拡大波動砲だトランジッション波動砲だとエスカレーションするうちに、単なる凄い主砲に成り下がってしまいました。それを再び誰もが恐怖する最終兵器の座に据え直す。これも2199の作り手の狙いであったでしょう。
 そう考えると、封印しなければならないほどの兵器であることを知るヤマトのクルーたちが、封印を解くことにさしたる葛藤もなく、むき出しの波動砲に恐怖しない2202の展開に、2199との断絶(というか落差)を感じてしまいます。

 さらに云えば、波動砲とは菊の御紋に当たるものでもあります。
 旧シリーズ制作時にヤマトのデザインを検討した際、西崎義展プロデューサーが強く主張したのが戦艦大和の艦首にある菊の御紋を宇宙戦艦ヤマトにも付けることでした。けれども、松本零士氏は軍国主義の象徴のような大和の菊花紋は付けたくない。「絶対に必要だ」「絶対に付けない」と意見が対立する中、デザインのクリーンナップを担当していた宮武一貴氏が「じゃあ、菊の御紋に見えれば良いんですよねってことで、(艦首の)菊の御紋をそのまま引っ込めた」。これにより、普段はただの穴だけど、正面を向いたときだけ砲口内の施条が花びらのようになって菊花紋に見えるデザインが誕生しました。これが波動砲です。
 この穴に蓋をすることで、シリーズ史上はじめて菊の御紋が見えないように――ようやく松本零士氏の当初の希望どおりに――したのが2199でした。
 この蓋を取ってしまう――それもアッサリと――ことに、私は動揺しました。


宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 3 [Blu-ray]■いつか来た道

ナドレック:命令を無視して出撃したヤマトの行動を、結局追認してしまう司令長官の態度も問題です。
 旧作をなぞったのだといえばそれまでですが、暴走する軍人を止めるどころか後から認めてしまうのは、満州事変を容認してしまった若槻内閣や犬養内閣、あるいは日中戦争を拡大させないと云っていたのに結果的には戦争拡大に加担してしまった近衛内閣を思わせます。
 ユーモアでいっぱいのファンタジー『モンスターズ・ユニバーシティ』ですら、素晴らしい活躍をしても規則に反した主人公たちはちゃんと退学処分になったのに、多くの規律に違反した古代たちを咎めず、うやむやにしてしまう流れには、歴史に学んだのだろうかと疑問を抱かずにはいられません。


 劇中で軍拡を批難するセリフを繰り返すのは、作品が軍国主義的にならないようにとの配慮からでしょうけれど、それで充分といえるのかどうか……。
 第三章以降の展開で、私の感じるモヤモヤが晴れれば良いのですが。


T.N:私の思考実験小説は、これからガデルとヴェルテの対話が進むにつれ、「再軍備だ、拡散波動砲だ」と息巻く地球が如何に愚劣なことをしているかが浮き彫りになるようにしたいと考えています。戦争の姿に関して、2202と私の小説は同じ2199を基にしたとは思えないほどの違いが出てくることでしょう。
 二次創作としての限界はありますが、2202とはまったく異なる「もう一つのヤマト」を作るべく精進を続けたいと思います。今後もお付き合い頂けますようよろしくお願い申し上げます。


ナドレック:よろしくお願い致します。


宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 1 [Blu-ray]宇宙戦艦ヤマト2202 第一章 嚆矢篇』  [あ行][テレビ]
第1話『西暦2202年・甦れ宇宙戦艦ヤマト』 絵コンテ/榎本明広 演出/加戸誉夫
第2話『緊迫・月面大使館に潜行せよ』 絵コンテ/アミノテツロ 演出/上坪亮樹
日本公開/2017年2月25日

宇宙戦艦ヤマト2202 第二章 発進篇
第3話『衝撃・コスモリバースの遺産』 絵コンテ/二瓶勇一 演出/川崎ゆたか
第4話『未知への発進!』 絵コンテ/加戸誉夫 演出/加戸誉夫
第5話『激突!ヤマト対アンドロメダ』 絵コンテ/中村里美 演出/矢野孝典
第6話『死闘・第十一番惑星』 絵コンテ/榎本明広 演出/星野真
日本公開/2017年6月24日

宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 2 [Blu-ray]監督/羽原信義  副監督/小林誠  原作/西崎義展
シリーズ構成/福井晴敏  脚本/福井晴敏、岡秀樹
キャラクターデザイン/結城信輝
音楽/宮川彬良、宮川泰
出演/小野大輔 桑島法子 鈴村健一 大塚芳忠 麦人 千葉繁 てらそままさき 神谷浩史 田中理恵 久川綾 赤羽根健治 菅生隆之 神田沙也加
ジャンル/[SF] [アクション] [戦争]
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【theme : 宇宙戦艦ヤマト2202
【genre : アニメ・コミック

tag : 羽原信義 西崎義展 小野大輔 桑島法子 鈴村健一 大塚芳忠 麦人 千葉繁 てらそままさき 神谷浩史

『怪盗グルーのミニオン大脱走』 楽しく暮らそう

Despicable Me 3 Soundtrack, Import 【ネタバレ注意】

 前二作、いや番外編の『ミニオンズ』も入れれば過去三作を通して、このシリーズには一貫したものがあった。それが、こうも大きく変えられるとは思わなかった。

 過去の怪盗グルーシリーズに共通していたのは、1960年代の文化への愛とこだわりだ。第一作『怪盗グルーの月泥棒 3D』は、ハゲの怪盗が登場する時点でアンドレ・ユヌベル監督の60年代の快作、怪盗ファントマシリーズを彷彿とさせた。第二作『怪盗グルーのミニオン危機一発』は、60年代にはじまった007シリーズのようなスパイ・アクションだったし、『ミニオンズ』に至っては時代設定を1968年にして、当時の楽曲やテレビ番組の引用をどっさり盛り込んだ賑やかな映画だった。

 ところが、シリーズ第三作『怪盗グルーのミニオン大脱走』は、60年代の権化のはずのグルーが、80年代を引きずる悪党バルタザール・ブラットにけちょんけちょんにやられる話だ。

 小さい頃は天才子役として持てはやされても、「大人の俳優」に転身するのは難しい。必ずしも本人のせいではないのだが、まだ小さいのに有名人になってしまったために、その後の「転落人生」ばかりが報道される例も多い。と、云われると、ドリュー・バリモアやマコーレー・カルキン等、80年代から90年代初頭にかけて一世を風靡した子役たちのその後の苦労を思い浮かべる人も多いだろう。
 80年代に人気子役だったバルタザール・ブラットもそんな一人だ。彼は栄光の80年代が忘れられず、今も80年代風のファッションに身を包み、80年代のヒット曲ばかり聴いている。だから本作はこれまでとはうってかわって、80年代の文化のオンパレードだ。バルタザール・ブラットが登場するたびに、しつこく80年代の曲が鳴り響く。
 『ミニオンズ』で見せた60年代への偏愛はどうしたんだ!? と云いたくなってしまうほど、60年代色は後退している。

 映画を大ヒットさせるには、幅広い客層にアピールする必要がある。子供向け、若者向けの映画といえど、中高年に受けるポイントも押さえておきたい。子供と一緒に映画館に来た親が満足してくれることもあるだろうし、面白ければ中高年だけでも観に来てくれるかもしれない。なにより中高年は、子供はもとより若者と比べても金を持っているはずだから開拓しない手はない。
 かくして2010年代には、80年代あたりを懐かしむ層を意識した映画の公開が相次いだ。日本では『イニシエーション・ラブ』、洋画では『テッド』、『ピクセル』、『アングリーバード』等が80年代の文化を取り上げた。もちろん、本作もその延長線上にある。
 1967年生まれのピエール・コフィン監督にとって、60年代の文化はいくら好きと云ってもリアルタイムで経験したものじゃない。一方で、80年代はみずからの青春時代そのものだろう。だから、これまでの作品の60年代の取り上げ方が、敬意と憧れを感じさせたのに対し、本作の80年代の取り上げ方には、気恥ずかしさと自虐が漂っている。悪党バルタザール・ブラットの、今となっては恥ずかしい大きな肩パッドの紫の服や、ところ構わずムーンウォークせずにいられない病的パフォーマンが、それを表している。

 が、これがいい!
 ネーナの「ロックバルーンは99」やヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」といった80年代のヒット曲は、いま聴いても名曲だし、『ラ・ラ・ランド』(2016年)でジャズピアニストの主人公が生活のために渋々演奏していたa-haの「テイク・オン・ミー」だって、やっぱりいい曲だ。
 シリーズも三作目ともなるとマンネリ化が危惧されるが、60年代の雰囲気を謳歌していたところに80年代が殴り込みをかける展開で新味を出すとはおそれいった。
 『ミニオンズ』のクライマックスの大怪獣が60年代らしさの象徴なら(たとえば『キングコング対ゴジラ』の米国公開は1963年だ)、本作で大暴れする巨大ロボット[*]は80年代の象徴だ(『UFOロボ グレンダイザー』は、「世界のテレビを変えた50作」のうち1980年を代表する作品に選出された)。

 受けて立つグルーとドルーの兄弟が、相変わらず60年代臭さぷんぷんなのもいい。奇妙な仕掛けに溢れたクルマで急行するグルーとドルーは、あたかも1968年の人気アニメ『チキチキマシン猛レース』でゼロゼロマシンを駆るブラック魔王とケンケンだ。


怪盗グルーのミニオン大脱走 Soundtrack とはいえ、『怪盗グルーのミニオン大脱走』を観終わって不思議だったのは、いい話だったような感動的だったような、はたまたバカバカしかったような、ごった煮の感情がこみ上げたことだ。とっても面白かったのだが、なんだこれはという感じだった。
 そして映画を反芻してみて、なんて取っ散らかった怪作なのかと実感した。

 前作で怪盗稼業から足を洗い、反悪党同盟のエージェントとして活躍していたグルーは、本作ではバルタザール・ブラットを取り逃がした責任を問われ、妻のルーシーともども反悪党同盟から追い出されてしまう。
 過去、怪盗グルーシリーズが発表されたのは、民主党のオバマ政権のときだった。けれども、本作の公開に先立つ2016年11月の投票で、共和党のドナルド・トランプが大統領選に勝利し、政権スタッフは刷新された。あたかもこれを反映したかのように、本作では反悪党同盟の局長サイラス・ラムズボトムが、いけ好かないヴァレリー・ダ・ヴィンチへ取って代わられてしまう。ヴァレリー・ダ・ヴィンチは、トランプの選挙対策本部長にして現在の大統領顧問であるケリーアン・コンウェイを模したキャラクターだといわれている。とにもかくにも、理不尽にも失職したグルーとルーシーは、今回は公的機関とは一線を画した立場で事件に当たる。

 ところが、バルタザール・ブラットとの対決が映画の中心なのかというと、そうでもない。グルーと双子の兄弟との再会バナシが大きな割合を占めているし、脈絡なくアグネスのユニコーン探しが挿入されるし、ルーシーは親としてどう振る舞うか悩んでいて、ミニオンたちはグルーと袂を分かって放浪している。前二作と同じように愛する者が連れ去られ、それを助けに行く展開はあるものの、誘拐目的の事件ではないから、これまでと違って救出劇がクライマックスにはならない。
 個々のエピソードはほとんど交わることなく並行して進んでいき、最後になってようやく一同が顔を合わせる程度だ。どうにも欲張り過ぎて、雑然とした印象である。もっと整理できたはずなのに、これでは話の焦点がはっきりしない。

 けれども、本作が微笑ましいのはアグネスら子供たちのエピソードがあるからだし、楽しいのはミニオンたちが相変わらずバカをやっているからだ。角が片方欠けた羊は待ち望んでいたユニコーンではなかったけれど、それでも変わることなく可愛がる顛末は、多様な生き方を肯定するこのシリーズに相応しく感動的だ。
 仕事を干されてグレてしまったブラットと、親の遺産を食い潰しながらそんな自分を変えたいドルーと、職がないことに負い目を感じて復職に懸命なグルー。中年男たちが三者三様にあがく姿は、スラップスティックの中にも悲哀を漂わせる。

 そして気がつくのだ。こんな風にいろんなことが並行して起きているのが私たちの日常なのだと。職場にしろ家庭にしろ親戚縁者のことにしろ、いつだってこちらの都合に関係なく事件は降りかかってくる。それこそが私たちの暮らしだから、本作が取っ散らかっているのはとうぜんなのだ。
 バルタザール・ブラットとの戦いも、ミニオンとの関係も、ドルーとの付き合いも、仕事のことも、子供たちとの暮らしも、様々なことがやがて落ち着くべきところに落ち着いていく。その畳みかけるようなハッピーエンドが、本作のごった煮の楽しさの正体だ。


 エンディングは、ピンク・パンサーシリーズのオープニングを思わせる古風なアニメーション。バルタザール・ブラットが退場した後は、また60年代風に逆戻りだ。
 やっぱりこれでこそ怪盗グルーだ。
 終わり良ければすべて良し、である。


[*] 数々のロボットアニメに敬意を表して「ロボット」と表記したが、本来ロボットとは自動機械のこと。人間が乗り込んで操縦するタイプは、正確には人型の重機と呼ぶべきだろう。


Despicable Me 3 Soundtrack, Import怪盗グルーのミニオン大脱走』  [か行]
監督/ピエール・コフィン、カイル・バルダ
出演/スティーヴ・カレル クリステン・ウィグ トレイ・パーカー ミランダ・コスグローヴ スティーヴ・クーガン ジェニー・スレイト ジュリー・アンドリュース
日本語吹替/笑福亭鶴瓶 生瀬勝久 芦田愛菜 中島美嘉 松山ケンイチ 山寺宏一 宮野真守 いとうあさこ 須藤祐実 矢島晶子
日本公開/2017年7月21日
ジャンル/[ファミリー] [コメディ] [ファンタジー] [アドベンチャー]
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【theme : アニメ
【genre : 映画

tag : ピエール・コフィン カイル・バルダ スティーヴ・カレル クリステン・ウィグ トレイ・パーカー 笑福亭鶴瓶 生瀬勝久 芦田愛菜 中島美嘉 松山ケンイチ

『カーズ/クロスロード』 カーズ3でプレーンズ3を楽しもう

カーズ/クロスロード オリジナル・サウンドトラック Soundtrack 【ネタバレ注意】

 楽しみにしていた作品が、未完で終わると残念なものだ。
 マンガ『魔王ダンテ』や『魔獣戦線』のように掲載誌の休刊で未完になった作品や、編集者が原稿を紛失したといわれる小説『妖星伝』のように、後年作者の手で完結できたものもあるが、『サイボーグ009』や『火の鳥』のように完結前に作者が死去してしまった作品も少なくない。
 映画の場合は金と人手がかかるだけに、マンガや小説以上に最後まで作り続けるのが難しい。シリーズ化を意図していたにもかかわらず、一作目の成績が振るわずにシリーズが頓挫するのはよくあることだ。

 『カーズ』(2006年)で4.6億ドル、『カーズ2』(2011年)で5.6億ドルの興行成績を叩き出したディズニー/ピクサーは、カーズファミリーの映画を量産することを計画した。自動車を主人公にした『カーズ』のような形で、ボーツ(船)やトレインズ(列車)を作ろうとしていたのだ。
 先陣を切ったのが、飛行機を主人公にしたプレーンズ三部作だった。第一作『プレーンズ』が2013年に、第二作『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』が2014年に公開され、あまりの傑作ぶりに仰天した私は、完結編となる第三作を心待ちにした。

 だが、待てど暮らせど、『プレーンズ3』は公開されなかった。5000万ドルの制作費に対して2.4億ドルの成績だった『プレーンズ』や、1.5億ドルしか稼げなかった『プレーンズ2』の状況を見て、三部作構想は棚上げになったのかもしれない。
 私は残念でならなかった。このシリーズの結末を是非とも観たかった。

 カーレースを題材にした『カーズ』と同様に、『プレーンズ』は飛行機レースを扱った長編アニメーション映画だ。違うのは、『カーズ』の主人公ライトニング・マックィーンが最初からレーシングカーなのに対し、『プレーンズ』の主人公ダスティが農薬散布用飛行機であることだ。農薬散布用なのに飛行機レースで活躍したいなんてのは、とんでもなく難しい夢だから、『プレーンズ』で描かれる悲哀と勝負の厳しさは半端じゃなかった。

 さらに『プレーンズ2/ファイアー&レスキュー』は、花形レース機として幸せの絶頂にいたダスティが、故障のためにレース人生に終止符を打たれる物語だった。ギアボックスを損傷して出力を上げられない彼は、肩を壊した野球選手や足を失くしたサッカー選手のようなものだ。これまで応援してくれた人々と接することすら辛いダスティが、これからどうやって生きていくのか。子供向けのアニメーション映画とは思えないほど深刻な物語だった。もちろん、飛行機やクルマのキャラクターはどれも可愛らしいし、映画はユーモアたっぷりで面白い。シリアスなテーマと、楽しく可愛い作風の組み合わせの妙に、私はいたく感心した。

 それだけに、完結編たる第三作に期待した。勝負の厳しさや、挫折と再起を描いてきたこのシリーズが、最後に何を語るのかと、興味津々だった。

 残念ながら、プレーンズシリーズの最後のメッセージを知る機会は永遠に失われた。――そう諦めたところに公開されたのが、カーズシリーズの第三作『カーズ/クロスロード』(原題:Cars 3)だ。
 生き甲斐や生き方といったシリアスなテーマを掘り下げ続けたプレーンズシリーズとは違い、カーズシリーズはライトニング・マックィーンと仲間たちの友情を中心に据えつつも、第一作は新人レーサー、マックィーンの成長物語、第二作はレッカー車メーターが主役のスパイアクションと、内容の振幅が激しかった。だから、第三作も新奇性を重視した作品になるのかと思っていた。
 ところが本作は、『プレーンズ3』が作られたらこうなったであろうと思えるような、生き甲斐や生き方を掘り下げた映画だった。


超合金 カーズ(Cars) ライトニング マックイーン(LIGHTNING McQUEEN) 約200mm ダイキャスト&ABS&PVC製 彩色済み完成品フィギュア 『カーズ/クロスロード』の主人公は再びマックィーンに戻る。花形レーサーとして幸せの絶頂にいたマックィーンが、レースで大破して、このままレース人生を続けるか否かの瀬戸際に追い込まれる映画の序盤は、『プレーンズ2』の要約といえる。飛行機ダスティの挫折と再起の物語をマックィーンもなぞるのだが、加えて本作は『プレーンズ2』の後にダスティが直面したであろう事態まで描き出す。
 『プレーンズ2』のダスティは、体の一部が故障したとはいえ、まだ若くて体力も気力も充分だった。だが、本作のマックィーンが迎える危機は、世代交代だ。旧い世代であるマックィーンは、性能に勝る新世代のレーサーたちに手も足も出ない。同じ旧世代のレーサーが次々引退していく中、現役であることにこだわるマックィーンはどんどん立場が悪くなる。自分を凌ぐ新しい世代に追い上げられ、居場所がなくなっていくとき、人はどのように生きていけば良いのか。

 これだ。これこそが、幻の『プレーンズ3』で語られるべき物語だった。栄光も挫折も味わったダスティがさらに直面する事態といったら、旧世代として若い世代にどう接するかという問題だったに違いない。

 私は、ジョン・ラセターをはじめとする作り手に感謝したかった。失われたとばかり思っていた物語を、見ることができた気分だった。
 『カーズ』の原案・脚本・監督と『カーズ2』の原案・監督、そしてプレーンズシリーズの原案とエグゼクティブ・プロデューサーを務めたジョン・ラセターは、本作でもエグゼクティブ・プロデューサーとして関わっている。ラセターは、脚本家たちに「今作も、もちろん子どもたちが楽しめる作品にしたい。それでいて大人も共感出来るものにしたいんだ」と伝えたという。


ディズニー カーズ トミカ C-47 クルーズ・ラミレス (DINOCOレーシングタイプ) 本作は、『モンスターズ・ユニバーシティ』で扱ったテーマも改めて深掘りしている。
 多くの映画が、やればできる、努力すれば望みは叶うと夢を振りまく中で、『モンスターズ・ユニバーシティ』が、努力してもできないものはできないこと、才能や環境に恵まれた連中には敵わないことを描いたのは驚きだった。子供向けの映画として、本当に大切なことを描いていた。
 もちろん、そもそもやらなければできないし、努力すればかなりのことがやれるのは自明の理だ。やりもしないでやれないと思ったらせっかくのチャンスを逃してしまう。
 そのことについて、本作は『モンスターズ・ユニバーシティ』とは違ったアプローチで描いている。

 本作の新キャラクター、クルーズ・ラミレスは、レーサーになりたかったのに、とても自分にはできないと諦めていた。本作では、やりもせずに頭からやれないと思っているクルーズと、新世代に引き離されてもまだ自分はやれると思っているマックィーンの人生が交叉する。
 やればできるかもしれないということと、やってもできないかもしれないということ。一見すると矛盾した二つのことを両立させて描く本作には、舌を巻くしかない。

 性能では挽回できなくても、知識と経験に磨きをかけて有利に立ち回ろうとするマックィーンの姿は、もう若くはない年長者たちへのエールでもあろう。同時に、昔の体験にあぐらをかいて新たなことを学ばなければ、伸び盛りの若者に敵うはずもないのだと反省を促してもいる。
 そして何より、若者にチャンスを譲り、自信をつけさせ、伸ばしてやることが、年長者の務めなのだと諭している。それは自分が栄光を掴むこと以上に、やり甲斐のある、大事なことかもしれないのだ。本作をつくるに当たっては、長いあいだ「カムバック物」として検討されていながら、途中から「師弟物」に発展したのだという。
超合金 カーズ(Cars) ファビュラス ライトニング マックイーン(Fabulous LIGHTNING McQUEEN) 約200mm ダイキャスト&ABS&PVC製 彩色済み完成品フィギュア ブライアン・フィー監督は云う。「たとえ何者でも、その人が得た居場所は、前の世代の助けがあってこそ。最終的には、次の世代にそのお返しができれば、それって人生で最高のことだと思う。」

 師弟物といっても、『姿三四郎』や『クリード チャンプを継ぐ男』のように若者が師匠になってくれと頼みにくるのではない。『ロッキー5/最後のドラマ』や『ハスラー2』のような師弟対決とも違う。本作のクルーズは、マックィーンが引っ張り上げなければ、生涯埋もれたままだった。これはガッツのある若者を称える映画ではなく、自信を持てず、前へ踏み出せない人に優しく手を差し伸べる映画なのだ。

 人を伸ばすには、小さなことでいいから成功体験を積ませることが重要だ。
 まさしくクルーズ・ラミレスは、砂浜で走れるようになったり、場末のデモリション・ダービーで優勝したりして、小さな成功を重ねていく。それこそが大事であったのだと、振り返ってみれば判るようになっている。

 レースの世界を題材にしながら、本作はありとあらゆる境遇の、あらゆる世代の人にとって普遍的な物語だ。
 映画を観終えたときの感慨は、何物にも代えがたい。


カーズ/クロスロード オリジナル・サウンドトラック Soundtrackカーズ/クロスロード』  [か行]
監督/ブライアン・フィー  制作総指揮/ジョン・ラセター
出演/オーウェン・ウィルソン クリステラ・アロンゾ アーミー・ハマー ラリー・ザ・ケイブル・ガイ ポール・ニューマン クリス・クーパー ネイサン・フィリオン ケリー・ワシントン リー・デラリア ボニー・ハント
日本語吹替版の出演/土田大 松岡茉優 藤森慎吾 山口智充 戸田恵子 赤坂泰彦 福澤朗
日本公開/2017年7月15日
ジャンル/[アクション] [アドベンチャー]
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【theme : ☆ディズニー映画「カーズ」☆
【genre : 映画

tag : ブライアン・フィー ジョン・ラセター オーウェン・ウィルソン クリステラ・アロンゾ アーミー・ハマー ポール・ニューマン 土田大 松岡茉優 山口智充 戸田恵子

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